「どうしてあの人は幸せそうで、私はこんなにも苦しいんだろう」って、気がつけば何度も比べてしまっている。小さいころから比べられ、比べて、自分を責めてばかり。そんなあなたに、少しだけ楽になる方法を話します。
目次
比較しては落ち込む癖、あなたのせいじゃない
他人と自分を比べて落ち込む——それは決して「性格が悪いから」とか「自分に自信がないから」だけではありません。
人は生まれつき比較するようにできているんです。
心理学ではこれを「社会的比較理論(Social Comparison Theory)」と呼びます。これは、人が自分の立ち位置を知るために無意識に他人と自分を比べてしまうという仕組みです。
たとえば、こんな風に感じたことはありませんか?
- 友人が結婚したと知ったとき、素直に喜べない自分がいた
- SNSでリア充な投稿を見て、自分の生活がみすぼらしく感じた
- 誰かの成功を知ったとたん、自分の今までの努力が色あせて見えた
それ、全部「比較」という脳の反応が引き起こしてるんです。
でも問題は、比較が必要以上に自分を傷つける形で働いているとき。
しかも、それが毎日のように続いていたら……。
比較が引き起こす「静かな崩壊」
一度比べ始めると、脳は快感と苦痛のループにはまります。
上には上がいて、下には下がいる。
だからといって、自分がどこにも居場所を見つけられない。
「あの人より上だから大丈夫」
そう思えたのはほんの一瞬。
でも次にSNSを開けば、自分より幸せそうな人が次々と現れる。
これが「比較依存」の怖さです。
特に現代のSNSは、脳を騙す仕掛けに満ちていて、あなたとまったく違う人生を送っている誰かを、「同じ土俵のライバル」に見せかけてきます。
でも、本当は違うんです。
たとえるなら、象とアリが同じ力比べをしているようなもの。
土俵が違えば、比べる意味すらありません。
そもそも「比べる」って、誰のため?
比較には大きく分けて2種類あります。
- 上方比較:自分より上に見える人と比べて、自分のモチベーションを上げようとする
- 下方比較:自分より下に見える人と比べて、自分を安心させようとする
でもここに落とし穴があります。
上方比較が強すぎると、
「自分には無理だ」「どうせあんな風になれない」と無力感に襲われます。
下方比較が習慣になると、
「私はあの人よりマシ」と思うことでしか自己肯定感を保てなくなります。
どちらも、本当の意味で自分を愛せない状態です。
そして比較がやめられない原因は、エゴ(自我)にあるとヨーガ心理学は教えてくれます。
「エゴが比較を作り出す」という事実
ヨーガ心理学では、「アハンカーラ(ahamkara)」という言葉があります。
これは「自分とは何か」という感覚をつくる心の働きです。
でもこのアハンカーラは、他人との比較によってしか自分の価値を確かめられないという特徴を持っています。
- 自分は「成功している人」だから価値がある
- 自分は「誰かより優れている」から生きていていい
そう思うことでしか、自分を肯定できない心の仕組みがあるんです。
でもそれは、ほんの少しのきっかけで簡単に崩れます。
たとえば、
- SNSで「もっと成功してる人」を見たとき
- パートナーが他の人を褒めたとき
- 兄弟が自分より評価されたとき
あっという間に、心がざわつき始めます。
比較を手放すために必要な視点
比較をやめるには、意志の力では足りません。
必要なのは、「比較がなぜ生まれているのか」を知ることです。
まずはこう問いかけてみてください。
- 「私は、なぜこの人と自分を比べているんだろう?」
- 「この人と私は、ほんとうに同じ土俵にいるのか?」
- 「見えているのは、その人の“人生の一部分”ではないか?」
人は、他人の人生を一枚のキラキラした写真で判断しがちです。
でも現実は、あなたと同じように苦しみ、迷いながら生きているかもしれない。
あなたが今感じている劣等感や嫉妬の正体は、
「自分の痛みをうまく受け止めきれていない心」から来ています。
「比較」ではなく「感情」を見てあげてください
比較は、じつは「感情の回避行動」でもあります。
心理学者 Dr.K は、こう語っています。
「比較とは、悲しみや怒りといったネガティブな感情を処理できないとき、
エゴが勝手に働いて“比べることでごまかす”仕組みです。」
つまり、比べることをやめたいなら、
まずは自分の中の“悲しみ”に気づいてあげる必要があるんです。
- どうしてあの人がうらやましく感じたのか
- 何に対して自分は苦しんでいるのか
- 本当は、どんな風に生きたかったのか
比べてしまったときは、責めるのではなく、
「心が痛がってるサイン」だと思ってください。
まとめ
- 比較は人間の自然な反応。でも、それが自分を壊すようになってきたら立ち止まる必要がある
- SNS時代の比較は、あなたとまったく違う世界にいる人すら、無意識に競争相手にしてしまう
- 「象とアリを比べて苦しむ」のは、土俵がそもそも違うから
- 比較を止めるには、感情を受け止めることから始めるのがいちばんの近道
あなたの人生は、あなたのもの。
他人の人生をなぞらなくても、あなた自身のリズムで咲ける花があると、僕は信じています。