孤独は、1日15本の喫煙と同じくらい致命的といわれます。
実際のどのくらいインパクトがあるのでしょうか?
グローバルヘルス企業Cignaの調査(2021年)によると、以下のことがわかっています。
- 孤独は、欠勤による生産性の低下で、雇用者に1,540億ドル以上の損害を与えている
- 孤独な従業員の42% 以上が、過去 3 か月間の勤務中に「精神的に別の場所にいる」と答えている
- 孤独な成人の3人に1 人が現在、不安症、うつ病、双極性障害と診断されている
孤独は脳に絶大なダメージを与え、あなたの精神をおかしくします。孤独が脳に与える悪影響を説明します。
アルツハイマー病
アルツハイマー型認知症は、軽度の記憶障害からはじまります。ひどくなると、会話をしたり環境に対応する能力が失われます。
セントルイス大学医学部の研究では、孤独な人は炎症マーカーであるインターロイキン-6 (IL-6) のレベルが高く、アルツハイマー病のリスク増加と関連していることがわかっています。
脳卒中
米国心臓協会の発表によると、社会的孤立や孤独は、心臓発作や脳卒中、またはどちらかによる死亡のリスクを約30%高めることがわかっています。
ハート誌に掲載された研究でも、孤独が虚血性心疾患や脳卒中のリスクを大幅に高めることが示唆されています。
うつ病
孤独な人は脳内のセロトニンレベルが低いため、うつ病や不安症を引き起こしやすくなります。
アルツハイマー病専門WebサイトBeing Patientに、32,000人の構造MRIデータを調べた大規模な研究があります。
社会的に孤立していた人たちは、側頭葉、前頭葉、海馬の脳容積が減少していました。
うつ病の人は、感情的な記憶に重要な役割を果たす海馬が小さいことが分かっています。
孤独な人は、白血球の遺伝子発現で、炎症性転写因子の活性が高くなります。慢性的な炎症は脳細胞を傷つけ、認知機能を低下させます。
社会脳がゆがむ
人間には社会脳があります。他人がどれだけ身近にいるか、その人が社会的輪の中でどのような位置にいるか気にする場所です。
孤独になると社会脳がゆがみます。他人を通常よりも社会的に遠い存在として見るようになります。
あなたも、親しい友人が自分と一緒にいたいと思ってくれるかどうか疑っていた時期がなかったでしょうか?
どれだけたくさんの友達をもっていても、質の低い関係なら孤独を感じます。友達の数ではなく友達との距離感が重要です。
社会的認知能力の低下
あなたの脳は、互いにつながった神経のネットワークで構成されています。神経同士のつながりが強ければ強いほど、神経から別の神経へ効率よく信号を伝えられます。
社会的に孤立すると神経細胞間のつながりがゆるくなります。相手の感情表現を読み取る「社会的認知能力」に影響します。
社会的認知能力
- 顔なじみの人を覚える
- 声のトーンで感情を解釈する
- 相手の願望、目標、意図を理解する
- 相手に共感する
正常な人は無意識にこういったことができます。孤立すると、脳の練習不足におちいってこのスキルが失われます。
幸福感が低下する
社会神経科学者のJohn T. Cacioppoが行った脳画像研究があります。
孤独な人とそうでない人に幸せな雰囲気の人の写真を見せた結果
、孤独な人のほうが脳の腹側線条体の領域が活性化しない
ことがわかりました。
この領域は、快感、報酬などの情報を処理する重要なところです。人とのつながりが少ないと、ドーパミンの量が減り幸福感がさがります。
睡眠サイクルが狂う
Sleep Medicine Reviewsに掲載された研究のレビューでは、孤独な人は入眠までの時間が長く、睡眠時間が短いことがわっています。
Wiley Online Libraryにある研究でも、孤独は、睡眠潜時 (眠りにつくまでの時間) の増加に関連していることがわかっています。
孤独な人は不安レベルが高いです。いろいろ考えすぎてしまい眠りにつきにくくなります。
脳が警戒モードになる
孤独になると、脳が
絶対に間違った人とつながってはいけない
という警戒モードになります。他人とつながることに恐れをいだくようになります。しかし、見方を変えれば脳の優秀な危険予知機能といえます。
統計的に見ると、知り合いに殺される可能性が一番高いです。薬物の共依存も人と関係をもつことではじまります。間違ったタイプの人と関係をもつことは、早死にするリスクを高めます。
とはいえ、常に警戒モードでいるのはストレスレベルが高すぎます。社会的な脅威に対して過敏になり、他人に対してあまり親切でなくなることで、さらに孤独感が増大します。
ストレス反応を増加させる
孤独がこれほどまでに悪影響を与えるのは、孤独がストレスを増大させ、健康維持のための機能を停止させるからです。
孤独感は、ストレス反応(HPA軸)を活発にさせ警戒心や不安感を増加させます。感情を処理する扁桃体にも変化があらわれ、異常に感受性が高くなることもあります。